拠点長挨拶

田中 剛 拠点長

 小さいながらも豊かで多様な自然・資源に恵まれた日本は、それらの保全から利活用に至るまで、自国のみならず地球全体の環境の健全な持続発展のための研究を積み重ねてきました。 ことに陸域に取り込まれる炭素 (=グリーンカーボン)に関する研究に関しては、本学は層の厚さを誇っております。

 一方、陸域面積だけでは世界61位の日本も、排他的経済水域等の水域を含めると世界6位の海洋資源大国です。水産資源だけでなく、海洋に含有されているレアアースやメタンハイドレートなどの天然資源を確保し活用していくこと、また海洋に取り込まれる炭素 (=ブルーカーボン)に関する研究を推し進めて地球環境問題の改善に寄与することは、海洋国家・日本に課されている最重要課題のひとつであると言えます。

 これらグリーンカーボンとブルーカーボンは相互依存の関係にあり、従来分断されがちであった両者の研究をシームレスにつないだ包括的研究を展開し推し進めることこそ、カーボンニュートラルを実現するための真の社会変革には不可欠です。そのため、2021年に閣議決定された、国内CO2排出量実質ゼロを目標とする『科学技術・イノベーション基本計画』以後、本学は海洋研究の最先端の研究機関である国立研究開発法人海洋研究開発機構 (JAMSTEC)と包括協定を結び、その連携を深めてまいりました。そして『経済財政運営と改革の基本方針2022』を受け、2023年4月より「ブルートランスフォーメーション(BX)」と「グリーントランスフォーメーション(GX)」の統合・融合による教育研究拠点である「BX・GX国際教育研究拠点」を設置いたしました。本拠点は、本学とJAMSTECの連携をさらに発展させ、陸域・海域を網羅する融合学問領域の創出やそれを担う国際的人材の育成、JAMSTECの有する最先技術の活用と本学の教育研究実績の粋を統合した教育プログラムの構築、人材交流や両機関の強みを最大限に活かした組織融合を進めて、日本を代表し世界を先導するカーボンニュートラル実現に携わる国際的最先端研究拠点としての機能確立を目指しております。

 本拠点がこの大役を全うし、世界に誇る教育研究拠点となるよう、拠点長として尽力してまいりますので、よろしくお願いいたします。

プログラム概要

海洋は、メタンハイドレートやレアアースなどのエネルギー・鉱物資源を豊富に含有し、多様な機能や物質生産能を持つ生物種を育む未利用資源の貯蔵庫です。海洋資源の開発と保全は、我が国において重要な成長戦略のひとつであり、その有効活用においては、海域のみならず、陸域を含む地球全体の環境と生態系を理解したモノづくり・エネルギー戦略の推進が求められます。特に、生物を介して海洋に取り込まれる「ブルーカーボン」と森林等の陸域に取り込まれる炭素「グリーンカーボン」の活用が重要な課題です。

これらの課題を解決するため、本拠点では、海洋学分野で世界をリードする国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)の研究基盤と、本学の強みである農学・工学研究分野の融合により、海域でのブルーカーボン研究「ブルートランスフォーメーション (BX)」と陸域でのグリーンカーボン研究「グリーントランスフォーメーション (GX)」を包括する最先端教育研究を展開します。特に、

「生態系理解と環境影響評価」

「二酸化炭素回収・貯留・利用(CCUS)」

「未踏生物資源を用いた材料開発」

「生態系理解と環境影響評価」

「二酸化炭素回収・貯留・利用(CCUS)」

「未踏生物資源を用いた材料開発」

の3つのテーマを柱として、陸域海域横断的な知識と技術の涵養と分野複合的な課題を見出し解決に導くことのできる、新たな価値を創造する国際人材を養成します。

さらに、本拠点では、連携大学院プログラムの一環として、JAMSTECの有する最先端技術を活用した研究および教育プログラムの提供や、カーボンニュートラルに関わる海外有力大学や研究機関との国際連携、スタートアップ創出の推進を行います。

国際的にも卓越した教育研究拠点として、BX・GX両方に精通した研究者の養成を行うことで、地球資源の循環による持続可能性社会の実現を目指します。