陸域における炭素固定を最大化するための土壌炭素蓄積メカニズムの解明

 土壌は陸域で最大の炭素プールであり、僅かな土壌炭素量の変動であっても、大気中の二酸化炭素濃度に顕著な影響を及ぼします。加えて、農業生産の観点から見ても土壌炭素量は土壌肥沃度と直接的に関係します。すなわち、気候変動の抑止や持続可能な農林業生産の実現には、土壌炭素動態を理解し、管理することが必要不可欠になります。
 我々の研究グループでは、土壌中の有機炭素蓄積量及び安定性を向上するために、土壌炭素の蓄積メカニズムの解明に取り組んでいます。特に、土壌炭素の蓄積を左右する要因として、1)様々な粘土鉱物が持つ異なる有機炭素固定能や蓄積した有機炭素の化学組成といった蓄積特性、2)有機炭素を分解し循環する土壌微生物の群集組成やその機能といった分解特性、にそれぞれ着目して先進的な研究を進めています。「グリーンカーボン」の蓄積・循環効率をさらに向上していくことを目的に、温帯から熱帯にわたる世界各地の土壌を対象に、安定同位体(13C/15N)の分析技術を駆使して、主要粘土鉱物群により安定化された有機炭素の量と形態の解明に取り組んでいるほか、生態環境に固有の土壌微生物群集が持つ分解・同化機能の解明、そしてさらには土壌微生物の死菌体由来の有機炭素が土壌有機炭素蓄積へ与える影響の解明、等にも取り組んでいます。これらの研究を通じて、土壌中の粘土鉱物と微生物の特性に応じた炭素固定を最大化する農業・林業管理方法の開発を目指すとともに、工学や海洋学の最新技術・知見と融合することで、世界にまだない新たな炭素蓄積技術の開発を目指しています。