有孔虫は炭酸カルシウムの殻を構築し、海洋中のCO2を固定する単細胞真核生物として、数億年前から現在に至る海洋生態系の低次栄養段階を構成する重要な位置を占めています。現在の海洋では、たとえばサンゴ礁海域において、1年間に1平方メートルあたり10〜1000 gもの炭酸カルシウムを作り出しています。現在よりも遥かに高い気温や二酸化炭素濃度であったジュラ紀や白亜紀には、炭酸カルシウムを構築する有孔虫が爆発的に放散していることが化石記録から明らかになっています。このことは、有孔虫が極限的な環境を生き抜くしたたかさと、CO2を鉱物化する重要な要素を秘めている可能性を示しています。

 

 

底生有孔虫Ammonia confertitestaの殻形成の様子。炭酸カルシウムの殻を作る際には、その材料となるCO2とCaイオンを海水中から取り込み、石灰化部位では細胞内pHを調整して炭酸カルシウムを結晶化させる。石灰化開始時(左上)と殻の鋳型ができたところ(左下)。炭酸カルシウムで作られる小さな部屋を付加成長成長させて、原生生物としては大型の殻を作る(右上)。スケールバーは、20 µm(左上下図)、100 µm(右上図)。