日本国内での金属腐食に関わるコスト年間6兆円を超えるという試算があり、微生物の活動により金属腐食速度が加速される現象が確認されています。しかしながら、金属材料の種類や環境要因によって関与する微生物が変わることからその全容は明らかにできていません。

 本研究では、加速された金属腐食現象が確認された工業用水環境における約二年間に渡る浸漬試験により、腐食過程あるいは健全材料表面上のバイオフィルムの微生物群集構造の変化を明らかにしました。特に金属腐食性と微生物活動に影響する溶存酸素に注目した結果、好気的な環境での腐食では、発達した錆の中で嫌気性の硫酸塩還元細菌が増加する一方で、嫌気的な環境では硫酸塩還元細菌が増加してこないという逆転現象を明らかにしました。また、抗菌性材料である銅・銅合金において、初期には微生物の多様性が抑えられる一方で、材料表面の劣化・汚損により多様な微生物によるバイオフィルム形成が生じることを明らかにしました。

 本研究成果は、金属腐食環境における微生物動態を環境因子及び材料因子の観点から明らかにしたことで、今後の微生物による金属腐食の診断技術や防食技術開発に有用な知見を与えるものです。

Wakai, S. et al., Corrosion, 82(1), 39-50. 2025. https://doi.org/10.5006/4762.